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海外情報 畜産の情報 2020年10月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

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調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
(掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、前月号でご紹介したもの以降、8月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【北 米】

1 (令和2年8月5日付)米国農務省、牛肉加工処理施設火災と新型コロナウイルス感染症の牛肉市場への影響調査結果を公表(米国)

 米国農務省(USDA)は7月22日、家畜・食肉・家きん業界が関係する市場の公平性・競争性を確保する取り組みの一環として、牛肉価格と肥育牛価格の価格差に関する調査報告書を公表した。これは、タイソン社の牛肉加工処理施設の火災前後および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生前と大流行期間における市場状況、肥育牛価格および牛肉価格、その価格差について調べたものである。

カンザス州ホルコムに所在するタイソン社の牛肉加工処理施設火災による影響

 2019年8月9日に発生した火災によりカンザス州ホルコムのタイソン社の牛肉加工処理施設が4カ月にわたり閉鎖されたため、米国産牛肉の生産と販売を担う肉用牛市場と加工処理体制に混乱が生じた。同処理施設は米国の牛肉処理能力の約5〜6%を占めていた。火災発生後には、肥育牛価格とチョイス級の牛肉価格(カットアウトバリュー(注1))の価格差(以下「2点価格差」という)は、100ポンド当たり67.17米ドル(1キログラム当たり158円:1米ドル=107円)となり、現在の価格報告制度が開始された2001年以降で最大となった。

(注1) 各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構成した指標価格。

 本報告書では、火災前の牛肉市場の傾向や状況、9月の第1月曜日の祝日であるレイバー・デーを含む週末に向けた季節的需要、同処理施設の閉鎖に対するパッカー、生体牛販売業者、牛肉購入業者の反応、肥育牛価格とチョイス級の牛肉価格への影響が考察されている。
 主な見解は以下の通り。
・火災が発生した8月上旬は、祝日であるレイバー・デー(9月2日)の週末に向けて牛肉に対する需要が季節的に増加する時期と重なっていた。通常、多くの小売業者は価格設定や販売促進の決定をレイバー・デーの数週間前に行う。
・肥育牛の先物価格が火災直後に大幅に下落した。その後、肥育牛市場も続いて価格が下落した。
・火災後、パッカーは主に土曜日のと畜シフトを追加することでと畜処理量を増加させた。
・火災直後、肥育牛の相対取引の件数と割合が著しく減少した。
・同処理施設の閉鎖は、牛肉価格と肥育牛価格の価格差に影響を与えていた。8月24日で終わる週の2点価格差は、100ポンド当たり67.17米ドル(1キログラム当たり158円)であったが、2016年から2018年の同期間の2点価格差の平均値は同27.66米ドル(同65円)であった。そのため、火災に関連した2点価格差は過去3年の同期間の平均値の2.4倍となった。

COVID−19の大流行による影響

 米国におけるCOVID-19は、肉用牛市場および加工処理体制に深刻な混乱をもたらし続けている。4月最終週の時点において、牛肉処理施設の従業員がCOVID-19に感染した影響により、ピーク時には米国の牛肉処理能力の約40%が休止状態に陥った。その結果、COVID-19が大流行した期間には、2001年に現在の価格報告制度が始まって以降最大となる、100ポンド当たり279米ドル(1キログラム当たり658円)超の2点価格差を記録した。
 本報告書は、COVID-19発生前と発生中の市場状況、2020年1月1日から6月6日までの期間のデータに基づく肥育牛価格と牛肉価格に与えた影響をまとめている。
 主な見解は以下の通り。
・3月のCOVID-19の大流行に対する市場の反応の特徴は、牛肉需要が急激に変化したことである。消費者による食料品店での生鮮牛肉の購入が増加し、外食需要は店内での飲食が中止されたため減少した。
・3月はパッカーがフル稼働し、牛肉価格は上昇した一方、肥育牛価格は大きく変動した。3月中旬から4月上旬にかけて、2点価格差は100ポンド当たり34米ドル(1キログラム当たり80円)から同66米ドル(同156円)に増加した。2016年から2018年の同期間の2点価格差の平均値は同21米ドル(同50円)を下回る水準であった。
・4月と5月は、多くの処理施設従業員がCOVID-19に感染したため、牛肉供給に深刻な混乱が生じた。処理施設の閉鎖や処理能力の低下は、牛肉生産やパッカーの肥育牛需要に悪影響を及ぼした。この肉用牛需要の減少が、肥育牛価格の低下を招いた可能性がある。
・4月には食料品店で牛肉不足が起こる可能性に対する消費者の懸念から、消費者の小売需要がさらに急増した。供給の混乱とさらなる需要の急増が、牛肉価格の急激な上昇を引き起こした可能性が考えられる。同時に、処理施設の閉鎖や処理能力の低下が拡大したため、パッカーは肉用牛の購入頭数を減少させた。4月上旬から5月の第2週にかけて、2点価格差は同66米ドル(同156円)から同279米ドル(同658円)に急拡大し、実に4.2倍となった。
・5月はレストランや他の経済活動が徐々に再開し、外食および小売食料品の牛肉需要が通常な状態に戻り始めた。また、処理施設の閉鎖や処理能力の低下も緩和された。牛肉価格は5月第2週にピークを迎え、同459米ドル(同1083円)となったが、6月第1週までに同298米ドル(同703円)まで下落した。肥育牛価格は、2020年の安値である4月下旬の同154米ドル(同363円)から、6月第1週には同179米ドル(同422円)まで上昇した。その結果、2点価格差は、5月中旬の同279米ドル(同658円)から6月初旬には同119米ドル(同281円)まで縮小した。2点価格差が今後も縮小し続けるかどうかを判断するには、時期尚早である。
 本報告書の公表に当たり、USDAのパーデュー長官は、「カンザス州ホルコムにあるタイソン社の牛肉処理施設で起きた火災後の閉鎖とCOVID-19の大流行は、米国産牛肉の生産と販売を担う市場と加工処理体制を明らかに混乱させた。本報告書では、これらの経済的混乱や、火災やCOVID-19の結果として生じた牛肉価格と肥育牛価格の価格差の著しい拡大について調査を行った。本報告書を公表できたことを嬉しく思う一方で、パッカー・ストックヤード法(注2)に反する行為があるかどうかを判断するための調査を継続することを、生産者に保証する。何らかの不公正な行為が確認された場合は、迅速に法的措置を講じるだろう」という声明を出している。

(注2) 市場競争を阻害する不公平な家畜取引や価格形成などを禁止し、生産者と消費者の利益保護を図ることを目的として1921年に制定された法律

【参考】
大規模牛肉加工処理施設で火災発生(米国)(海外情報(令和元年8月22日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002500.html
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い牛肉市場は依然として混乱(「畜産の情報」海外の需給動向【牛肉/米国】2020年7月号)https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001214.html


 

【国際調査グループ】

2 (令和2年8月11日付)牛肉の肉質等級別格付割合、プライム級が過去最高を更新(米国)

2019年度の格付実績

 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)が公表している「National Summary of Meats Graded」によると、2019年度(2018年10月〜2019年9月)の肉質等級別牛肉格付実績(注1)(重量ベース)は、肉質等級の格付を受けた牛肉全体に占めるプライム級(最上位等級)の割合が8.8%(前年度比1.2ポイント増)と過去最高を更新した(表)。割合が最も多いチョイス級は73.4%(同0.3ポイント減)、次いで多いセレクト級は17.5%(同1.0ポイント減)となった。また、肉質等級の格付を受けた牛肉全体のうち、上位3等級(プライム級〜セレクト級)に分類されたものが99.7%、歩留等級の格付を受けなかったものが71.9%となった。なお、過去5年間では、プライム級が増加、チョイス級がおおむね横ばい、セレクト級が減少傾向で推移している(図1)。
 


 歩留等級別牛肉格付実績は、歩留等級の格付を受けた牛肉全体に占めるY1(最上位等級)の割合が5.3%(同0.5ポイント減)、Y2が33.9%(同0.9ポイント減)、割合が最も多いY3が47.8%(同0.3ポイント増)、Y4が11.2%(同1.1ポイント増)、Y5が1.9%(同0.2ポイント増)となり、上位2等級(Y1、Y2)が減少、下位3等級(Y3、Y4、Y5)が増加した。なお、過去5年間では、いずれの等級もおおむね横ばいで推移している(図2)。
 

 


 

 2019年度の格付実施率を見ると、若齢肥育牛(去勢牛・未経産牛)の95.6%、経産牛の0.9%が、肉質等級、歩留等級の両方、もしくはいずれかの格付を受けた。また、若齢肥育牛の肉質等級、歩留等級の格付実施率はそれぞれ95.1%、27.2%となった。

(注1) 米国では、肉質等級(プライム〜キャナーの8段階)と歩留等級(Y1〜Y5の5段階)の2種類の格付が存在し、USDAの検査官によって実施されている。肉質等級は、成熟度(月齢)や脂肪交雑の度合いで格付され、プライム級を最上位等級としている。歩留等級は、生体重量に対する精肉歩留まりの割合を示しており、Y1を最上位等級(52.3%以上)としている。詳細については「米国における牛肉生産の産業構造〜消費・輸出入の動向まで〜(畜産の情報2016年11月号)」(https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2016/nov/wrepo02.htm)を参照されたい。
 

コロナ禍の格付動向

 USDA/AMSが毎週公表している「National Steer & Heifer Estimated Grading Percent Report」によると、プライム級の週別の割合は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で米国内の食肉処理場の稼働率が大きく落ち込んだ2020年4月下旬以降、高水準で推移しており、5月中旬(5月17日〜23日)のピーク時にはセレクト級の割合(12.28%)を上回る12.55%を記録した(図3)。一因として、食肉処理場の稼働率低下を受けたフィードロットでの出荷遅延に伴い、肥育期間が長期化したことなどが影響しているとみられる。肉質等級は脂肪交雑が多ければ上位になるため、肥育期間が長い方が上位等級になる傾向がある。
  また、プライム級に加え、チョイス級の割合も前年を上回って推移していることから、セレクト級はその分大きく減少し、4月下旬以降、前年を大きく下回って推移している(図4、図5)。
 





 

近年の肉質等級別牛肉卸売価格の推移

 USDA/AMSが毎週公表している「Comprehensive Boxed Beef Cutout」によると、肉質等級の上位3等級(プライム級〜セレクト級)の牛肉卸売価格は、等級間の価格差が増減を繰り返しながらも、おおむね連動して推移している。等級別の卸売価格を2019年の年間平均で見ると、プライム級は100ポンド当たり247.1米ドル(1キログラム当たり577円:1米ドル=106円)、チョイス級は同219.7米ドル(同513円)、セレクト級は同205.4米ドル(同480円)となり、等級間価格差では、プライム級とチョイス級の価格差は同27.4米ドル(同64円)、チョイス級とセレクト級の価格差は同14.3米ドル(同33円)となった(図6)。なお、等級間の価格差は、肥育期間などの収益性に関わる経営判断のための指標の一つとされており、価格差が大きいと長期肥育へのインセンティブが高まる傾向がある。
 

 
 

 直近の牛肉卸売価格を見ると、COVID-19の影響で食肉処理場の稼働率が落ち込んだことにより、2020年5月中旬をピークに急騰し、その後、稼働率回復に伴って急落した(注2)。急落以降は、フィードロットで出荷待ちの牛が多いことに加え、外食需要の減少が続いていることなどから、前年を下回って推移している。
 

(注2) COVID-19が米国の牛肉卸売価格に与えた影響については、「米国農務省、牛肉加工処理施設火災と新型コロナウイルス感染症の牛肉市場への影響調査結果を公表(海外情報2020年8月5日発)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002757.html)、「牛肉市場、新型コロナウイルス感染症に伴う異例の混乱から回復(畜産の情報2020年8月号)」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001263.html)を参照されたい。
 

【調査情報部 河村 侑紀】

3 (令和2年8月21日付)農務省はコロナウイルス食料支援プログラムの対象農作物を追加(米国)

 本年5月19日、米国農務省(USDA)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行の影響を受けた米国の農家や牧場主などを救済するためにコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP)の詳細を公表した。その後、USDAは6月22日までパブリックコメントを行い、個人や団体から寄せられた1740件の意見やデータを検討した結果、7月9日および8月11日にCFAPの対象農作物の追加や支払い率の修正について公表した。5月19日に公表されたCFAPの詳細から変更があった事項は以下の通りである。なお、CFAPの直接支払いは、コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security(CARES) Act)と商品信用公社(CCC)憲章法に基づく、二つの財源から成り立っている制度である。
 また、単位の換算には、1米ドル=108円(2020年8月14日TTS相場)、1ポンド=0.453592キログラムを使用した。

家畜

 支払対象と畜牛のうち、肥育牛の体重が1400ポンド超から1200ポンド超に拡大されたほか、支払い対象となる家畜に2歳以上の全ての羊が追加された(表1:変更部分は橙色)。
 
 

果物や野菜など

 果物や野菜などについては大幅に対象作物が追加され、さらに一部の対象作物については支払い額も調整が行われた(表2:変更部分は橙色)。また、表2中の(3)CCCに基づく単位当たり支払い額については、当初、対象作物の重量当たりに応じて支払いを行っていたが、対象作物の面積当たりに応じた支払い方法に変更された。
 


 

 支払い対象の農産物に液卵および冷凍液卵が追加された。支払いは、2020年1月から3月の第1四半期における生産量に対して、CARES Actに基づく支払い額とCCCに基づく支払額をそれぞれ乗じた額の合計となる(表3)。なお、殻付き卵および乾燥卵はCOVID-19の影響で全米的に5%以上の価格下落が確認されなかったため、対象にはならなかった。
 
 

その他

 上記以外に、観賞用植物や切り花、水産物も支払い対象として追加された。

申請と支払い

 今回、多くの農作物が支援対象に追加された一方で、桃やルバーブ(ダイオウ属の野菜の一種)に関しては2020年1月15日から4月15日までの間に販売されたが5%以上の価格下落により損失が生じた農産物には該当しないとして、当該項目の対象から外れている。また、2020年4月15日までに農場から出荷されたものの販路を失い重大な品質劣化が生じた農産物である桃、ルバーブ、アスパラガスおよびきのこに関しては、データを精査した結果、支払額が減少している。
 当初は、資金を確保するため、申請が承認された生産者はまず支払い額の80%を受け取り、その後、 農場サービス局(FSA)が残りの20%を生産者へ自動的に支払う仕組みであった。 今後は、CFAPを申請する生産者は、申請が承認された段階で、支払い限度額範囲内で全額を一度に受け取ることになる。また、申請の締め切りが9月11日に延長された。
 8月11日の公表に合わせて、パーデュー長官は、「トランプ大統領は、米国の農家や牧場主がCOVID-19の大流行を乗り越え、米国と世界へ十分な食料や繊維を供給し続けられるよう支援している。そのために、トランプ大統領はCFAPにおいて160億ドルもの直接支払いを承認し、本日、われわれは支援が必要とされている農作物をさらにCFAPの支援対象として追加することができた。CFAPは、生産者がCOVID-19の影響を乗り越えるためにUSDAが用意した数多くの手段の内の一つに過ぎず、USDAはローンの支払い猶予や、作物保険や申請期限に柔軟性を加えるなど、生産者を支援するために多くの手段を活用している」と述べている。

【参考:新型コロナウイルス関連情報(米国)】
・米国農務省は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている生産者への支援策の詳細を発表(海外情報(令和2年5月26日発)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002709.html
・米国農務省、新型コロナウイルス感染症に対する農業支援策を発表(海外情報(令和2年4月28日発)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002685.html
・食肉団体は新型コロナウイルス感染症の影響を受ける業界の窮状を訴える(海外情報(令和2年4月17日発
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002679.html
 
 【国際調査グループ】

4 (令和2年8月28日付)北米食肉協会が労働安全衛生庁との連携協定を締結(米国)

 北米食肉協会(NAMI)(注)と米国労働省労働安全衛生庁(DOL/OSHA)は7月29日、食肉・食鳥処理場や食肉加工施設(以下「処理場」という)などの従業員を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から保護するために有益な情報や指針などを共有するための連携協定を締結した。

(注) 食肉・家きん肉業界を代表する団体であり、食肉加工企業や加工処理用機器製造企業など畜産物の生産に関連する企業が加入している。NAMI会員は米国の牛肉、豚肉、羊肉、家きん肉の加工処理の大部分のシェアを占めている。

 本協定により、NAMIおよびOSHAは、NAMI会員、労働現場の安全および衛生対策の専門家、処理場従業員、一般市民に対して、労働安全衛生法に基づく労働者の権利と雇用者の責務を理解し、COVID-19への感染リスクを低減させ従業員の安全を確保するための情報、指針、研修資料を提供することになる。
 本協定で、参加者が協力して達成すべきとされる目標は、以下の通りである。
・処理場におけるCOVID-19の感染リスクやリスク管理の課題に関する情報を、定期的な遠隔会議やオンライン上の通信手段などを通じて、OSHA職員と業界の安全および衛生対策の専門家の間で共有する。
・COVID-19の伝播リスクへの理解と感染拡大を防ぐための最善措置に関する情報を更新し、それらの情報を業界の雇用者と労働者に対して、印刷物、電子媒体のメディアや支援手段、OSHAおよびNAMI のウェブサイトなどを介して提供する。
・共同フォーラム、座談会、利害関係者との会議、ウェビナーその他の手段を通じて、処理場におけるCOVID-19の感染拡大を防止するためのOSHAが提供する指針や、NAMIが提供する優れた取り組みや効果的な対策について、積極的に現地に出向いて支援を行う。
・COVID-19の感染拡大を防止するために利用可能な資材や優れた取り組みに関するOSHAおよびNAMIが主催する会議、地方で開催される会議およびその他のイベントに参加し、展示や講演を行う。
・NAMIの会員およびその他の業界関係者に対して、OSHAの地方事務所との関係構築を深め、OSHAが承認する州ごとの労働安全計画を作成し、OSHAによる現場での相談プログラムを活用して職場の安全と衛生対策を改善し、処理場におけるCOVID-19の感染拡大を防止することを奨励する。
 また、双方の代表者から構成される実行チームは年に1〜2回会合を開き、参加者の責務について議論し、活動状況を共有し、連携協定の目標達成に向けた成果を確認することとされている。
 本協定の締結を受けて、NAMIのジュリー・アンナ・ポッツ会長兼CEOは、「この協定を通じて、われわれはOSHAと協力し、COVID-19の大流行の間およびその後において、処理場で働く従業員の健康と安全を守るための取り組みを共に続けていくことを期待している。これらの従業員は米国に食料を供給するために必要不可欠であり、地域経済において極めて重要な役割を担っている」と述べている。
 また、OSHAのローレン・スウェット首席副次官補は「米国の食料供給の安全性は、健康な従業員により操業が続けられている処理場に依存している。OSHAとNAMIは協定を結ぶことにより、重要な畜産業界の雇用主が新型コロナウイルスのリスクから従業員を保護するために必要な手段と情報を確実に入手できるよう支援することが可能になる」と述べている。
 本年4月28日にCOVID-19に関する国家非常事態宣言が適用されている間において、国防生産法(Defense Production Act)に基づき、米国民にたんぱく質を供給し続けるために、処理場は操業を続けることを命じる大統領令が発令された。これにより、処理場は従業員への適切な安全衛生対策を徹底した上で操業しているが、米国におけるCOVID-19終息の兆しが見られない中、本協定による今後の成果が注目される。

【参考:新型コロナウイルス関連情報(米国)】
・トランプ大統領、食肉・食鳥処理場の操業継続を命じる大統領令を発出(米国)(海外情報(令和2年5月7日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002691.html
・食肉・食鳥処理場の処理能力、前年同時期の95%超まで回復(米国)(海外情報(令和2年6月12日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002727.html
 
 【国際調査グループ】

【欧 州】

1 (令和2年8月7日付)EU・ベトナム自由貿易協定、8月1日に発効

 EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)が、約8年間の交渉の末、2020年8月1日に発効した。欧州委員会のプレスリリースによると、今回の協定はEUが発展途上国と締結した最も包括的な貿易協定であり、関税の削減、SPS措置を含む非関税障壁の解決、地理的表示(GI)の保護、政府調達・サービス市場の開放などが含まれている。
 フィル・ホーガン貿易担当委員は、「ベトナムは、二国間の貿易協定の下でEUと貿易を行う77カ国のうちの一員となる。今回の協定は、EUと、活力に満ちた東南アジア地域との経済関係を強化するものであり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機以降の復興に資するだけの経済的な潜在力を有している。また、妥結に至るまでの貿易交渉によって、ベトナムの労働者権利の保護に関して改善が見られたことは、貿易政策がいかに経済を良い方向へ導く力となりうるかを示すものでもある」とコメントしている。
 なお、農畜産物に関わる主な合意内容については以下の通りである。

関税削減

 EVFTAでは、EUからベトナムへの全ての輸出品目の65%の関税が発効と同時に撤廃となり、残りは10年間で徐々に関税が引き下げられ、最終的には全ての輸出品目の関税の99%が撤廃される。
 今回の発効により撤廃される主な農畜産物の関税率と撤廃までの期間は表1の通りである。
 
 

地理的表示(GI)の保護

 169品目のEU産飲食品の地理的表示が保護されることとなる。この中にはパルミジャーノ・レッジャーノやフェタといったチーズや、ティローラー・シュペック(オーストリアのベーコン)やシュヴァルツヴェルダー・シンケン(ドイツのハム)といった食肉加工品などが含まれており、この協定により将来的には新たなGIがリストに追加されていくこととなる。

関税割当

 EUは、ベトナムからの輸入によってEUの生産者が影響を受ける品目について関税割当を設定することとなった(表2)。
 
 
 欧州委員会によると、ベトナムは、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国ではシンガポールに次ぐ2番目の貿易相手国であり、2019年の貿易額は455億ユーロ(5兆7330億円:1ユーロ=126円)に及ぶ。また、EVFTAは、EUとASEAN加盟国との間で締結した貿易協定としては、シンガポールに次ぐ2番目のものとなり、日本、韓国との既存の協定に加え、EUのアジアとの関わりにおいて重要な節目になるとしている。
 
【調査情報部 小林 智也】

2 (令和2年8月28日付)総額5000万ユーロの肥育牛生産者向けCOVID-19支援措置を採択(アイルランド)

 アイルランド農業・食料・海洋省は8月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により経済的な影響を受けた4万2000戸の肥育牛生産者向けに、「肥育牛生産者支払(Beef Finishers Payment(BFP))」として、総額5000万ユーロ(63億5000万円、1ユーロ=127円)の所得支援を措置したと発表した。
 アイルランドでは、肉用牛部門の置かれている価格下落や出荷先の受入停止といった厳しい状況を受け、生産者団体が政府に対し緊急支援の実施を要請していた(下記参照(令和2年4月21日発海外情報))。
 同省Dara Calleary大臣は今回の発表に際し、COVID-19が肉用牛部門にもたらした危機および農村経済への影響を「十分に認識し」、都市封鎖(ロックダウン)による外食産業の閉鎖によって、特に「肥育生産者らは価格下落や出荷制限に苦しんでいる」とした上で、今回の支援が、「COVID-19による経済的影響の緩和に役立つ」と同時に、農村地域の維持においても重要な役割を果たすと述べている。
 申請の受付予定は2020年8月19日から9月9日までとされ、対象となる肥育牛や対象生産者の要件も以下の通り公表されている。

 対象牛の主な要件
・2020年2月1日から2020年6月12日までの期間にと畜された肥育牛・と畜時に8カ月齢以上であること
・対象生産者が、と畜前最低30日の間所有していること(これに満たない場合、前所有者が対象生産者で30日以上所有していれば対象となる)
・1戸当たり最大100 頭まで

 対象生産者の主な要件
・対象期間にと畜のため出荷していること。
・2020年欧州連合(EU)共通農業政策(CAP)の基本支払制度(BPS)対象者
・アイルランド政府食料庁(Bord Bia)牛肉・羊肉品質保証スキームメンバーまたは2020年9月30日までに同メンバーになる者

 なお、支払単価は1頭当たり100ユーロ(1万2700円)を予定しているが、支払額が5000万ユーロの予算を超えた場合にはこの範囲に収まるよう、単価を減額することとしている。
 また、同措置は、欧州委員会が定める加盟国による暫定的な補助の枠組みに基づきアイルランド国家予算によって実施されることから、認可のためアイルランド政府から欧州委員会に申請中である(下記参照(令和2年4月8日発海外情報))。

【参考】
・アイルランド生産者団体、肉用牛農家への緊急支援の即時実施を要請。新型コロナウイルスによる影響に対応(海外情報(令和2年4月21日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002680.html
・欧州委員会、新型コロナウイルス感染拡大に対応する農業・食品部門を引き続き支援(海外情報(令和2年4月8日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002669.html
 
【国際調査グループ】